宅建試験対策! 権利関係
【請負】
Bさんは、Aさんから頼まれた仕事を完成させる(履行する)ことを約束し、Aさんは仕事をしてくれたBさんへ報酬を支払うことを約束しました。
これを「請負」といいます。
仕事を依頼したAさんを「注文者」、依頼を受けたBさんを「請負人」と呼びます。
請負は、契約書がなくても当事者同士の「口約束」(諾成契約といいます)で成立することをしっかり頭に入れておきましょう。
諾成契約とは?
当事者双方の合意だけで成立する契約
もくじ
【注文者、請負人それぞれの義務】
1:注文者の義務
請負人に対して報酬を支払う義務が生じます。
2:請負人の義務
注文者から受けた仕事を完成し、引き渡す義務が生じます。
仕事の目的物に瑕疵があった場合には、瑕疵担保責任を負います。
【請負における瑕疵担保責任】
請負人に対する瑕疵担保責任の追求は、注文者がその瑕疵について善意でも悪意でも関係なく責任追求出来ます(無過失責任)。
1:瑕疵補修請求
注文者は、目的物に瑕疵があった場合、請負人に対し相当期間を定めて瑕疵の補修をするよう請求する事ができます。
例外で、「瑕疵が重大ではなく、なおかつ修繕に過分の費用を要する場合」は、瑕疵補修請求は認められません。
2:損害賠償請求
目的物に重大な瑕疵があり、建替えをするしかないといった場合には、注文者は請負人に対し、建替えにかかる費用相当額の「損害賠償請求」ができます。
ただし目的物が建物等、土地の工作物である場合は、契約を解除してしまうと現状復帰の義務が生じて、せっかく建てた建物を壊して“さら地”に戻さなければならず、そうなれば当然そのための費用がかかってしまい経済上大きな負担が生じるため、契約の解除はできません。
注文者の損害賠償と、請負人の報酬支払請求権は同時履行の関係となります。
そのため注文者が損害賠償請求したにも関わらず、請負人が何の対応もしてくれなかった、といった場合には、注文者も報酬を支払わない、もしくは損害賠償額を報酬から差し引くことで「相殺」が可能です。
3:契約解除
目的物に瑕疵があり、そのせいで目的を達成できない場合には、原則として「契約解除」が認められます。
ただし、2でもご説明したように、目的物が建物等の土地の工作物であれば、契約解除はできないので注意しましょう。
【目的物が土地の工作物だった場合の担保責任追求期間】
工作物が瑕疵によって滅失、または損傷した場合、注文者は「その滅失または損傷の時から1年以内」であれば、請負人に対し瑕疵担保請求を追求することができます。
けれど、すべてが1年以内というわけではありません。
【担保責任追及期間の例外】
・木造建築物は「引渡した時から5年以内」
・石造、れんが造、コンクリート造、金属造などの建物は「引渡した時から10年以内」
という例外がありますので、しっかり覚えておくと安心です。
また瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求は、「請負人が当該建物を引渡した時から1年以内」であれば行うことができます。
ここも注意しておきましょう。
■民法第634条 請負人の担保責任
仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
【宅建試験での出題例】
問:請負の目的物である建物の瑕疵が重要でない場合であって、その修補に過分の費用を要するときは、注文者は瑕疵の修補を請求する事はできない。
答えは○です。
請負は権利関係の中でもそれほど難しい分野ではありませんが、出題傾向は決して低くありませんので、理解できていれば加点ポイントになる可能性が高いと言えます。
注文者と請負人の間に契約書はいらない(口約束で成立する)点と、請負人の瑕疵担保責任の期間、契約の解除ができない例、損害賠償請求ができる期間をしっかり覚えておくと良いでしょう。
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