宅建試験対策! 権利関係
【連帯債務】
A、B、Cさんの3人が、それぞれ1000万円ずつお金を出し合い、Dさんから3000万円で家を購入しました。
売主(債権者)であるDさんからすると債務者が複数存在するので、それぞれから個別に1000万円ずつ回収するのは手間がかかりますし、誰か1人でも払わない人が出れば、不利益を被ります。
そこで民法では、売主Dさんは、Aさん、Bさん、Cさんの「誰か一人」または全員に対して「債務全額分(3000万円)を払ってね」と請求できるようにしています。
このように、1つの債務について複数の債務者(A、B、C)が各自に独立して「全部の給付をなすべき債務」を負担する関係を「連帯債務」と言います。
■民法第432条 連帯債務(履行の請求)
数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
もくじ
【求償権と負担部分】
例えば、Dさん(債権者)が債務者である3人(連帯債務者と言います)のうち、Aさんにだけ「3000万円払ってね」と請求した場合、Aさんは3000万円をまとめてDさんに支払うことになります。
代わりにAさんは、自分以外の連帯債務者に対し、「みんなの分を立て替えてDさんに全額を支払ったから、各自1000万円を私(A)に払ってね」と請求することができます。
これを「求償権」と言います。
上記の例では、1人あたり1000万円ずつ負担していますが、負担の割合は連帯債務者間で自由に設定できます。
各自がいくら負担するのかを定めた額を「負担部分」と言います。
【連帯債務の負担部分に関する具体的な例】
例えば連帯債務の負担部分を、「A・1500万円」、「B・1000万円」、「C・500万円」としましょう。
・債権者Dさんが、Aさんの債務全額を免除した場合
Aさんは1500万円を支払わなくてよくなります。
その代わりBさんとCさんは、Aさんの負担部分を差し引いた残りの1500万円について連帯債務を負います。
・Aさんが、債権者Dさんに対し、3000万円の債権を持っていた場合
相殺関係が成立します。
このときAさんが3000万円を相殺した場合、債務は消滅します。あとはAさんがBさんとCさんに対して行う「求償」の問題となります。
逆にAさんが相殺をしない場合、BさんとCさんは「Aさんの負担部分1500万円」について相殺を援用し、残りの1500万円について連帯債務を負います。
■民法第436条 連帯債務者の一人による相殺等
1、連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
2、前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。
このように連帯債務者の一人に履行や相殺といった事由が生じると他の連帯債務者にも影響することがありますが、これはあくまでも例外の場合です。
本来は「連帯債務者に生じた事由は他の連帯債務者に影響を与えない」のが原則です(これを相対効といいます)。
ではこの原則の例外とは、いったいどのようなものでしょうか。
【覚えておくべき絶対効】
上記の例外として、他の連帯債務者に影響してしまう事由を「絶対効」といいます。
この絶対効の内容は以下の通りです。
1:履行
連帯債務者の1人が契約を履行する(AさんがDさんに3000万円支払う)と、ほかの連帯債務者の債務も消滅します。
2:履行の請求
債権者が連帯債務者のうち、だれか1人に請求すれば、ほかの連帯債務者にも請求したことになります。
3:更改
連帯債務者の1人が、新たに債務を成立させて前の債務を消滅させると、それに伴いほかの連帯債務者の債務も消滅します。
4:相殺
連帯債務者の1人が相殺すれば、ほかの債務者の債務も消滅します。
5:混同
連帯債務者の1人であるAさんが、債権者であるDさんの息子だったとしましょう。
「Dの息子であるAは、Dの死亡により債権を相続した」
このような場合、債権者と債務者が同一になりますので、債務は消滅します。
6:時効
連帯債務者の一人に消滅時効が成立した場合、その債務者の負担部分について、ほかの連帯債務者の債務も消滅します。
(Aさんに時効が成立すると、消滅したAさんの負担部分1500万円が3000万円から差し引かれ、BさんとCさんは残りの1500万円の債務を負います)
7:免除
時効と同様に、連帯債務者の一人の債務が免除される(払わなくて良くなる)と、その債務者の負担部分について、ほかの連帯債務者の債務も消滅します。
(Aさんの債務が免除された場合、免除されたAさんの1500万円を3000万円から差し引いて、BさんとCさんは残り1500万円の債務を負います)
【上の例を基にした、宅建試験での出題例】
問:債務者Aが、債権者Dに3000万円を支払った場合、Aは、連帯債務者であるBとCに対し、それぞれの負担部分と定めていた金額及びその支払った日以降の法定利息を求償する事ができる。
答えは○です。
連帯債務の出題率は、中~高めといったところでしょうか。きちんと内容を理解したうえで頭に入れておくと、確実に得点につながるでしょう。
重要なのは債務の元本だけではなく利息分も求償出来る点。
さらに重要なのは「絶対効」の内容です。
過去問を利用して、出題される言葉や内容に慣れておく事をオススメします。
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