宅建試験対策! 宅建業法
不動産賃貸業の報酬、つまり仲介手数料には上限が定められています。
その上限を超えて報酬を受領すると宅建業法違反となります。
今回は、貸借の媒介・代理の報酬限度額について解説していきます。
【貸借の報酬限度額】
媒介でも代理でも、依頼者(貸主)と借主の双方から受け取ることが出来る報酬額の合計は「賃料の1ヶ月分が限度」です。
では、報酬額について具体的な例を挙げてご説明していきます。
例:Aが所有する「事務所」をBが月額賃料15万円で借ります。この契約を宅建業者Cが媒介した場合、Aから15万円を報酬としてCが受け取った場合、Bから「仲介手数料」を受け取ることはできません。
すでに当事者の一方から報酬限度額である「15万円」を受け取っているからです。
※賃料は消費税を抜いた本体価格(賃料)です。なお、「居住用物件」と「宅地」の賃貸借に消費税は課税されません。
事業用物件(事務所や店舗等)であれば、賃料に消費税が課税されていますので、それを控除します(報酬限度額に消費税8%分の額を加算出来る)。
つまり、上記例の場合は「事務所」を月額賃料15万円で借りる契約ですので、Cが受け取ることが出来る報酬限度額は15万×1.08=16万2000円となります。
ちなみにこの報酬額(仲介手数料)は、貸主に請求しなければならない、といった決まりはありません。
もちろん借主が払わなければならない、という決まりもありませんし、双方から受け取っていい金額の割合にも定めはありません。
【居住用建物の場合】
賃料の1ヵ月分が限度額となりますが、事務所や店舗の場合と異なり、原則として依頼者の一方から受け取れる報酬限度額は賃料の1/2ヵ月分とされています。
ただし、相手方が承諾すれば合計で1ヵ月分を限度に、比率(内訳)を自由に決めることができます。
※この承諾は媒介依頼を受けるときに得ておかなければならない点に注意しましょう。
例:宅建業者Cが貸主A・借主Bとする「居住用アパート」の賃貸借契約を媒介した場合、借主Bの承諾を得ていれば、Bから媒介報酬として賃料の1ヵ月分を受け取ることも可能となります。
(もちろん、Bから限度額をもらった場合、Aから媒介報酬を受け取ることはできません)
【権利金の授受がある場合】
権利金とは、賃貸借契約締結時に支払われる一時金のうち、契約終了後に返還されないもの(礼金等)を指します。
権利金の授受があれば「権利金を売買代金とみなして売買の報酬の計算式を適用する」ことができ、借賃1ヵ月分と比較して「高いほう」が報酬限度額となります。
例:A・B間の賃貸借が「賃料15万円」、権利金500万円の事務所だった場合、
500万×4%+2万円=22万円となり、賃料の1ヶ月分である15万円より多くなります。
※この計算式は居住用建物には適用されません。宅地または店舗、事務所といった「非住居建物」にのみ適用されます。
【不当な報酬額を要求する行為の禁止】
媒介報酬以外に、交通費や広告費、案内料等を請求することはできません。
とくに、「不当に高額な報酬を要求する行為は禁止」されています。
実際に受け取らなかったとしても、要求しただけで宅建業法違反となります。
※例外として「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」であれば、受領してもいいよ、とされています。
例外1:貸主Aが「どうしてもこのアパートを借りてくれる人を見つけたいから、広告を増やして欲しい」と宅建業者Cに伝え、「広告を増やす事は可能ですが、そのためには広告費も増えることになるので、広告費を請求させて欲しい」とCが返答したのに対し、Aが「もちろんそれでいいよ」と承諾したのであれば、その広告料に相当する額を受け取れるということです。
例外2:依頼者から遠隔地の調査を依頼され、その調査にかかる費用等は、依頼者による事前の承諾があれば受領することができます。
【貸借の報酬額の計算表】
居住用建物 |
居住用建物以外 (宅地・事務所・店舗等) |
|
媒介 |
貸主・借主合わせて 借賃1ヵ月分 (依頼を受ける際に承諾を得ている場合を除き、一方から1/2ヵ月分) |
・貸主・借主合わせて 借賃1ヵ月分(内訳問わず) または ・権利金等を基準として算出した額のうち、高いほうが限度 |
代理 |
貸主・借主合わせて 借賃1ヵ月分 (内訳は問わない) |
媒介の場合と同じ |
【宅建試験での出題例】
問:宅地建物取引業者A(消費税課税業者)は、B所有の建物について、B及びCから媒介の依頼を受け、Bを貸主、Cを借主とする定期借家契約を成立させた。1ヶ月分の賃料は15万円、保証金(Cの退去時に全額返金されるものとする)は300万円とする。建物が居住用である場合、AがBおよびCから受け取ることができる報酬の限度額は、BおよびCの承諾を得ている時を除き、それぞれ8万1000円である。
答えは○です。
「居住用」ですので、保証金を権利金(売買代金)とみなして計算することはできませんし、さらに「Cの退去時に全額返還される」金額は「権利金」として認められません。
よって、15万円(賃料1ヶ月分)÷2×1.08=81000が正解となります。
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