宅建試験対策! 権利関係
【賃貸借】
不動産業で必ずからんでくる賃貸借についてまとめました。宅建試験でもよく出題される分野です。
アパート等で一人暮らしをした事のある人なら、実際に体験している方も多いのではないでしょうか。
家賃(賃料)を支払い、部屋(目的物)を借りるといった契約を「賃貸借契約」といいます。
借りる側を「賃借人」、貸す側を「賃貸人」と呼び、賃貸契約によってそれぞれに義務(債務)が生じます。
もくじ
【賃貸人の義務(貸す側)】
1:目的物を賃借人に使用させる。
2:目的物を修繕する。
3:費用の償還(賃借人が立て替えた費用を返還する)に応じる。
自分が賃借人の立場で契約をしてアパートに住み始めた場合、もしトイレの水が流れなかったりしたら生活に支障が出てしまいますね。
すぐに修繕する必要があります(これを必要費と言います)。
もしそのトイレを賃借人自身が実費で修繕した場合。
そもそもそれを直すのは賃貸人の義務なので、「賃借人は、必要な修繕にかかった費用の全額を、賃貸人に対し”直ちに”請求する」事ができます。
また、壁紙の張替えなどにかかる費用を「有益費」と言い、賃借人自身が剥がれた壁紙を修繕した場合などは契約終了時に支出額または価値増加額のいずれかを賃借人に払う義務があり、どちらを支払うかは賃貸人が選択できます。
【賃借人の義務】
1:賃料を支払う。
民法では、賃料は後払いを原則としており、宅地建物の場合は月末払いが原則です。
実際の不動産の賃貸実務では、特約をつけて家賃前払いにしていることがほとんどですね。
2:目的物を返還する、また、返還の際の”原状回復”義務
原状回復とは、借りた当初の状態に戻して返すことを言います。
例えば、契約時には綺麗だったドアを、飼い犬がボロボロにしてしまった場合、賃借人がドアの修理代を支払い、綺麗に直してから返還しなければなりません。
3:目的物の善管注意義務(丁寧に扱うという意味)
善管注意義務とは、「善良な管理者としての注意義務」という意味です。
一般社会人として、取引の上で通常要求される程度の注意義務のことを言います。
【賃貸借の終了、または更新】
期間に定めのない契約の場合、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。
期間が定められている契約であれば、その期間満了によって賃貸借が終了します。
また、期間に定めがあっても、契約書に「期間満了時の1ヶ月前までに解約の申し入れがなければ、自動更新とみなす」とした内容が記載されることもあります。
(一般的な賃貸マンションなどの契約では、自動更新になっていることが多いですね)
このように、当事者間の合意で契約を更新(継続)することも可能です。
もし、火事等で目的物そのものが「全部滅失」した場合、賃貸借契約は終了します。
【賃貸借における対抗力】
Aさんの借りていた土地を、貸主であるBさんが、Cさんに売却しました。
Aさん⇒Bさんから土地を借りていた
Bさん⇒自分の土地をCさんに売却
Cさん⇒「Aさん、私の土地から出て行って」
この場合、土地の所有権はCさんに移るので、Cさんが「もうここは私の土地なので、出て行ってください」と言ってきた場合、AさんがCさんに対抗するためには、「賃借権を登記」しておく必要があります。
もしAさんが賃借権を登記していた場合は、Cさんの要求を拒むことができます。
また、Cさんは「所有権移転登記」をすることによってAさんに家賃の請求をすることができます。
Aさん⇒「賃借権の登記をしているから出て行かないよ!」
Cさん⇒「わかったよ。所有権移転登記はしたから、土地の使用料は私に払ってね。もし疑うなら法務局で確認して」
【賃借権の譲渡・転借】
・賃借権の譲渡
賃借人が第三者に賃借権を譲渡した場合、譲渡前の賃借人と、賃貸人の関係は終了します。
譲渡前の賃借人は関係の終了に伴い、賃貸人に対して敷金の返還請求が可能です。
賃貸人は、新たに賃借権を取得した者に対してのみ賃料を請求する事が出来ます。
・賃借権の転借
賃借人がさらに第三者に対して、借りている部屋を”又貸し”することを「転借(てんしゃく)」と言い、賃貸人と賃借人の関係は継続し、新たに又貸しされた者を「転借人」と言います。
賃貸人は、賃借人と転借人の双方に賃料を請求する事ができます。
・注意点
賃借権の譲渡、転借は共に賃貸人の承諾がなければ認められません。
無断で行ったことが判明し、賃貸人に対する背信的行為であることが明らかな場合には、賃貸人は賃貸借契約を解除する事ができます。
もし背信的行為であると認めるに足らない場合は解除できませんので、ここも注意してください。
■民法第601条 賃貸借
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことによって、その効力を生ずる。■民法第608条 賃借人による費用の償還請求
1、賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。2、賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。
ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。■民法第612条 賃借権の譲渡及び転貸の制限
1、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2、賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
【宅建試験での出題例】
問:賃借人Bが、賃貸人Aに無断で甲建物をCに転借した場合、転借の事情のいかんに関わらず、AはAB間の賃貸借契約を解除する事が出来る。
答えは×です。
無断で転借した場合、賃貸人が解除できるのは「背信的行為」が明らかな場合に限ります。
賃貸借に関する重要度は中~やや高め、といったところでしょうか。
賃貸借における対抗力と、譲渡・転借に関する問題はけっこう出題率が高いので、テキストと過去問を繰り返し解いてしっかり覚えておきましょう。
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