【通謀虚偽表示】
宅建試験における権利関係の出題範囲は民法から10問、借地借家法から2問、区分所有法・不動産登記法から各1問の計14問出題されます。
そのため民法の知識をしっかりと定着させておかないと大きな失点につながりかねません。
民法は大きく総則、物件、債権、相続・親族に分かれますが、特に「総則」でつまずいてしまうと他の分野も理解できなくなるので、しっかり対策をとっていきましょう。
ここでは「通謀虚偽表示」について解説していきます。
【そもそも通謀虚偽表示とは?】
借金を返すことができずに債権者に土地を持って行かれそうになっているAさんがいます。
そこへBさんが「そのAさんの土地、私が買ったことにすればよくない?」と持ちかけ、双方が共謀して架空の契約をした場合はどうなるでしょう。つまり、でっち上げですね。
架空であったとしても双方が合意のうえで行った契約ですから、成立してしまうのかというと、もちろんそんなことはありません。
「でっち上げは無効」となります。
【でっち上げを知らずに巻き込まれたらどうなるの?】
しかし、この架空の契約を「でっち上げ」とは知らないCさん(善意の第三者)が、Bさんから土地を買ってしまいました。
Aさんからすれば本来は自分の土地なのにBさんが勝手に第三者に転売したことになり、「返せ!」と言いたいところでしょう。
しかし残念ながらそうはいきません。
Aさんが「土地を返せ!」と主張できる相手はBさんだけです。
なぜならAさんとBさんとの間の契約は、あくまでも架空のものであって、ただの“でっち上げ”でしかないからです。
【善意の第三者とは?】
では、Cさんの立場からも見ていきましょう。
虚偽表示(でっち上げ)とはいえ、Aさんの土地はBさんが買取ったことになっているので、当然Cさんは、Bさんの土地だと信じて買うことになります。
そしてCさんは、この土地が実はAさんのものであることは知るよしもありません。
契約を結んだ後にAさんが出てきて、「Cさんが買ったその土地は、実は私のだから返してください(対抗)」なんて言われたら、もしあなたがCさんなら納得できるでしょうか? できるはずがありませんよね。
当然ながらCさんも納得できません。
この場合、民法の規定ではしっかり善意の第三者を保護するようにできています。
そもそもAさんは債務逃れのために、その土地を表面上だけBさんへ売ったことにしました。
なにも知らないCさんがBさんから土地を買った場合、Aさんは、Cさんに対抗できません。
Cさんは買った土地をAさんに返す必要はありません。
【悪意の第三者だった場合は?】
では、どうしても土地を取り戻したいAさんがDさんに一連の流れを説明して「Cさんの土地を買い戻して欲しい」と頼んだとします。
この場合、Dさんが、AさんとBさんの虚偽表示を知った上で合意すれば“悪意の第三者”ということになります。
Dさんも通謀しているのだから、「Dさんに土地を返してくれ」というなら成立するのかというと、残念ながらこれも成立しません。
仮にこれが成立したとしたら、CさんとDさんの売買契約もなかったことになってしまいます。
つまり、一人でも善意の第三者を挟んだ契約である限り、Aさんは「土地を返せ!」とは言えないのです。
債務逃れをしようとした当然の報いと言えるでしょう。
当事者間での通謀虚偽表示⇒ |
無効 |
善意の第三者に対して⇒ |
対抗できない |
■民法第94条 通謀虚偽表示
1、相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。2、前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。■判例、大判昭和16・8・30
不動産保全のためその所有名義を変更する場合において、当事者間に該目的のための所有権移転の意志ある場合は、一種の信託行為として有効であるが、かかる意思なく、通謀の上移転があったように仮装して登記簿上の所有名義を移転するのは虚偽表示である。
【宅建試験での出題例】
問題 : Aが債権者の差し押さえを逃れるため、Bと通謀してA所有地をBに仮装譲渡する契約をした。Cが、AB間の契約の事情に善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受けた場合、所有権登記を受けていなくてもCはAに対し、その所有権を主張する事が出来る。
○か×の二択です。もちろん上記例題の答えは○です。
もしくは、「所有権登記を受けていないCはAに対しその土地の所有権を主張できない」
などといった、微妙な言い回しの引っ掛けが出ることも予想されるので注意が必要です。
この言い回しの場合は×となります。
【まとめ】
あまり難しく考えすぎず、「もし自分がCさんだったら」とイメージしながら過去問の例題を解いてみてください。
そうすれば通謀虚偽表示に関する出題で失点することは防げるでしょう。
注意しなければならないのは、上記のようにそれらしい専門用語をこじつけている引っ掛け問題です。
理屈さえ理解できていれば対応できますので、落ち着いて試験対策をしていってくださいね。
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