宅建試験対策! 宅建業法
このページでご紹介する「自ら売主制限」は、宅建試験で毎年出題されている重要分野です。
不動産取引業を行うにあたり宅建士の実務としても必要な知識ですので、しっかりと身につけておきましょう。
【自ら売主制限】
宅建業者が売主となり、宅建業者ではない者が買主となる場合、業者には「8つの制限」が課されます。
もくじ
【8つの制限】
①自己の所有に属さない物件の契約制限
・ 他人物売買の制限
第三者への転売は、「当該不動産を確実に入手出来る場合」でなければ認められません。
例:Aの土地を宅建業者Bが入手し、Cに転売しようとしている場合、A・B間で売買契約を締結していれば入手が確実なのでOK。または売買契約の予約でも可。
・未完成物件の売買の制限
宅建業者が売主の場合、未完成物件の売買は「禁止」されています。
ただし、手付金等の保全措置をとっていれば売買が認められます。
②クーリング・オフ
※宅建業法「自ら売主の8種規制:クーリング・オフ」にて詳しく解説します。
③損害賠償額の予定等の制限
・宅建業者が売主の場合、違約金も含め損害賠償の予定額は「合算して売買代金の10分の2を超えてはならない」と定められています。
※10分の2を超えた場合は、「10分の2を超えた部分」だけが無効となります。全額無効ではありませんので注意しましょう。
④手付額の制限
・手付金についても、「売買代金の10分の2を超えてはならない」と定められています。
損害賠償の予定額と同様に、10分の2を超えた部分は無効となり、10分の2までの金額が「手付金」として扱われます。
宅建業者が自ら売主となる売買契約の締結で、宅建業者が手付金を受領したときは、その手付は解約手付とみなされます。
たとえどんな特約をしたとしても、手付は常に解約手付の性質をもちます。
そのため契約の相手方が履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、売主はその倍額を償還して、契約を解除することができるようになっています。
・買主に不利な特約は無効です。
例:買主は解約の際、手付の放棄に加え300万円を支払わなければならない、といった内容の不利な特約は無効です。
⑤瑕疵担保責任についての特約の制限
・買主が瑕疵を知らない場合(隠れた瑕疵)についてのみ、瑕疵担保責任(損害賠償請求・契約解除が認められる)が適用されます。
※瑕疵の原因が誰にあるのかは関係ありません。売主に故意過失がなくても、瑕疵担保責任を負います(無過失責任)。
・宅建業者が売主の場合、買主に不利な特約は無効ですので、「瑕疵担保責任を負わない」とする特約をつけることはできません。
ただし、責任追及期間については民法より不利な規定も認められます。
※責任追及期間
民法→瑕疵発見から1年以内
宅建業者が売主の場合→引渡しから2年以上
⑥手付金等の保全措置
宅建業者が手付金等の返還債務を負う場合に、銀行等がその債務を連帯して保証する契約を「保証委託契約」といいます。
1:銀行や信用金庫による「連帯保証」→完成物件・未完成物件ともに対象となります。
2:保険事業者による「保証保険」→完成物件・未完成物件ともに対象となります。
3:指定保管機構による「保全措置」→※完成物件についてのみ対象となります。
・手付金以外の中間金も保全の対象となります。
・手付金等の保全が不要の場合
1:買主へ所有権の移転登記がされる(買主が所有権の保存登記をする)
2:手付の額が少額の場合
※未完成物件→代金の5%以下かつ1000万円以下
※完成物件→代金の10%以下かつ1000万円以下
上記に当てはまる場合には手付金等の保全措置は不要です。
⑦割賦販売契約(分割払い契約)の解除等の制限
民法では、割賦金の支払いが1日でも遅れたら契約を解除するという内容の特約を付けることも認めていますが、宅建業法(宅建業者が売主)では、「30日以上の期間を定めて書面で催告し、その期間内に支払いがされていないときでなければ、契約の解除や残代金の一括請求をすることはできない、としています。
⑧所有権留保等の禁止
売買契約の締結後、代金の全額が支払われるまで所有権を買主に移さない(所有権移転登記をしない)ことを所有権留保といい、宅建業者が売主の場合、これを禁止しています。
ただし、例外が2点あるので注意してください。
※例外1:宅建業者の受領した額が、代金の10分の3以下であるとき
※例外2:代金の10分の3以上を支払っても、買主が抵当権設定や保証人を立てる等の残代金の支払いの担保措置を講じる見込みが無いとき
上記2点に該当する場合のみ、宅建業者が売主であっても、所有権留保が認められます。
上記の制限はあくまでも売主が宅建業者で、買主が「宅建業者以外の者」の場合に適用されるものであり、売主も買主も宅建業者の場合は適用されませんので注意しましょう。
【宅建試験での出題例】
問:宅地建物取引業者Aは、Bの所有する宅地を取得することを停止条件として、宅地建物取引業者Cとの間で自ら売主として当該宅地の売買契約を締結したことは宅地建物取引業法に違反しない。
答えは○です。
宅建業者から宅建業者への売買契約ですので、8種の制限は適用されません。
こういったひっかけ問題には十分注意しましょう。
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