宅建試験対策! 権利関係
【保証債務】
賃貸マンション・アパートを契約する際や、銀行からお金を借りる際に「保証人」というワードを誰もが一度は目にした事があると思います。
単純に「保証人」と聞くと、「他人の借金を背負わされる人」といったネガティブなイメージを持たれることがありますが、ざっくり言ってしまえばその通りです。
Aさんが、B銀行から1000万円を借りる場合、建物や土地を持っていれば「抵当権」を設定することでそれを担保にできます。
けれど抵当に入れる財産をもっていない場合は抵当物がないのですから、抵当権を設定することは不可能です。
そこで、B銀行は抵当権以外の手段で万が一に備える必要があるため、Aさん(主たる債務者)に本人以外の第三者であるCさんを保証人として立てさせるのです。
こうしてB銀行は、もしAさん(主たる債務者)が借金を返済出来なかった場合、Aさんに代わってCさんが1000万円を返済するよう「債務」の支払いを「保証させる」ことができます。
これを保証債務と言います。
• Aさん⇒B銀行から1000万円を借りた
• Cさん⇒Aさんの借金の保証人になった
• Aさんが借金を返済できなくなった⇒CさんがB銀行に1000万円を返す
もくじ
【保証債務の成立条件】
保証債務は、主たる債務者(Aさん)は関係なく、「債権者(B銀行)と「保証人(Cさん)」との保証契約により成立します。
このとき、もしAさんが「Cさんは親友だから迷惑はかけられない! Cさん以外の保証人を用意する!」と言ったとしても、Cさんが「Aさんのためなら保証人になるよ」と債権者である銀行と合意した場合には、Aさんの意思とは関係なく「書面」により保証契約を結ぶ事ができます。
• Aさん「Cさんに迷惑かけたくないから保証人にはしたくない」
• Cさん「Aさんのためなら保証人になるよ~」
• CさんとB銀行が合意した場合は保証契約は有効
【保証人になれない例外】
基本的に保証人は誰でもなれるとされていますが、例外があります。
保証人を立てる義務がある場合には、以下の2点に注意してください。
1:制限能力者は保証人になれません。
保証人は「行為能力者」でなければならないためです。
2:弁済の資力がなければ保証人にはなれません。
もしCさんに弁済の資力がなかった場合には保証人の意味がないので、債権者は「しっかりお金を払えるだけの資力を持ったほかの保証人に変えてください」と主たる債務者に請求できるようになっています。
■民法第446条 保証債務(保証人の責任等)
1、保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2、保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3、保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
【保証債務の性質】
1:付従性
・主たる債権が成立しない(例:B銀行がAさんにお金を貸さなかった)場合には、保証債務も成立しません。
・主たる債務が消滅した(AさんがB銀行に全額返済し終えた)場合には、保証債務も消滅します。
・主たる債務の内容が軽減した(例:Aさんが半分返済を終えて、債務の残りが500万になった)場合、保証債務の内容(Cさんが万が一の時にB銀行に支払う額)も軽減します。
・主たる債務の内容が重くなっても、保証債務の内容は重くなりません。保証契約を結んだ当時の額より減る事はあっても、増えることはないと覚えましょう。
・保証契約の内容が主たる債務より重い(例:Aさんが借りたのは1000万なのに、B銀行がCさんに対し2000万円保証しろ、という内容を提示した場合)には、主たる債務の内容と同一の限度額(1000万円)まで減らす事が出来ます。
・主たる債務の消滅時効が中断された場合には、それに伴い保証債務の消滅時効も中断されます。
・主たる債務が時効で消滅すれば、保証人も保証債務の消滅を主張する事ができます。
・主たる債務者が債権者に対し、債権を持っている場合には、保証人はこの債権で保証債務を相殺するよう主張することができます。
2:随伴性
主たる債務が第三者に譲渡されたり、何らかの理由でB銀行以外の第三者に移転すると、保証債務も一緒に移転します。
例えばB銀行の債権がDさんに移転したとしましょう。
この場合、AさんがDさんに債務を返済できなければ、DさんはCさんに保証債務の履行を請求することができます。
3:補充性
あくまでも主たる債務者が債務を返済出来なかった場合のみ債務を保証するのが「保証人」です。
そのため、B銀行がAさんではなくCさんに直接「お金返して!」と要求してきた場合、Cさんは「まずはAさんに請求してよ!」と主張できる権利を有します。
これを「催告の抗弁権」といいます。
けれど、この催告の抗弁権を主張できない例外が2つあります。
1:主たる債務者が破産手続開始決定を受けた場合
Aさんが破産してしまえば、無いところからお金は取れませんので、Cさんがいくら「Aさんに言ってよ!」と言ったところでCさんが払うしかありません。
2:主債務者の行方が不明な場合
Aさんに請求したくても行方がわからない以上、B銀行はAさんに請求することはできませんので、この場合にもCさんは「Aさんに言ってよ!」とは言えないのです。
以上の2点はしっかり覚えておきましょう。
■民法第452条 催告の抗弁権
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。
ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
【検索の抗弁権】
債権者が主たる債務者に請求した後であっても、保証人は「まずはAさんの財産から取れるだけ回収してよ!」と主張する権利を有します。
これを「検索の抗弁権」といいます。
検索の抗弁権を主張するには、以下2点の証明が必要です。
1:主たる債務者に弁済の資力があることの証明
2:その執行が容易であることの証明
■民法第453条 検索の抗弁権
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
【宅建試験での出題例】
問:債権者Bが、保証人Cに対して直接1000万円の支払いを求めてきたとしても、債務者AがBに500万円の債権を有している場合、CはAの債権による相殺を主張して、500万円を支払えば良い。
答えは○です。
自分が誰かの借金の保証人になった事をイメージするとわかりやすいです。
保証債務は過去問から見ても出題率が高く、他の分野に比べると理解しやすいので、ここは確実に得点できるようにしましょう。
保証債務の保証契約は「書面」で行う点と、「保証債務の性質」をしっかり覚えておくと安心です。
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