宅建試験対策! 権利関係
【債務不履行とは】
宅建試験でもよく出題されるのが債務不履行です。
債務不履行とは、「債務者が約束通りに債務を果たせない場合」を言います。
単純に「債権者=売主、債務者=買主」というわけではありません。
例えばAさんが、Bさんに3000万円で建物を売った場合。
このときAさんはBさんに対し3000万円の債権を有しますが、同時にBさんに対して「建物を引渡す」という債務を負います。
同時にBさんはAさんに対し、3000万円の支払い義務(債務)を負いますが、「建物を引き渡してよ」という権利(債権)を有します。
• Aさんの債権と債務
• 債権=Bさんに3000万円を支払ってもらう権利
• 債務=Bさんに建物を引き渡す義務
• Bさんの債権と債務
• 債権=Aさんから建物を引き渡してもらう権利
• 債務=Aさんに3000万円を支払う義務
もしBさんがAさんに建物の代金3000万円を約束の期間に払えなかったら「債務不履行」ですし、逆にAさんがBさんに建物の引渡しをしなかった場合も「債務不履行」となります。
【3つの債務不履行】
1:履行遅滞
引渡しの期日が到来したにも関わらず、売主が目的物を引き渡さない場合、相手方は債務の履行を請求できます(遅れた分の損害賠償請求も可)。
また、契約を継続すべき理由がなければ、「契約の解除」も可能です。
2:履行不能
引渡しの目的物が火事で焼失してしまった場合、相手方は直ちに契約を解除する事ができ、合わせて損害賠償請求も可能です。
3:不完全履行
まだ完成していない状態で建物を引き渡された場合、相手方は2通りの対応を取る事ができます。
① 売主に完全な履行が出来る場合には、「完全な履行の請求と合わせて損害賠償請求」ができる。 |
② 売主に完全な履行が不可能な場合には、「直ちに契約の解除と合わせて損害賠償請求」ができる。 |
例えば、引渡しの目的物が「放火」によって焼失した場合、債務者に故意または過失がないこと及び責めに帰す事由がない(放火の犯人が逮捕されて債務者の善意無過失が証明された場合など)場合には、債務者は悪くないと証明されていますから、債務不履行にはなりません。
【損害賠償額の予定】
債務不履行の相手方(債権者)は、損害賠償請求ができます。
けれどそのためには債権者の方で損害の発生と損害額を証明する必要があります。
とは言え、いざ債務不履行が起こってから色々な証明をしていくのは手間がかかるので、契約時にあらかじめ損害賠償額を定めておくことができます。
これを「損害賠償額の予定」と言います。
損害賠償額の予定が合意されれば実際の損害額とは無関係に債務者はこの予定額を支払うことになり、例え裁判所であってもこの額を増減する事はできません。
ただし、公序良俗違反となるような場合(AさんがBさんを脅して高額な損害賠償額の予定を設定させたうえ、目的物を壊すなどして、それがもともと壊れていたと言わんばかりにAさんにいちゃもんを付けて債務不履行を起こさせ損害賠償金をだまし取ろうとした場合)には、もちろん無効となります。
ここまでいくと保証の話ではなく、ただの犯罪ですからね。
では、一般的な例で見ていきましょう。
Bさんが完成していない状態の建物をAさんに引渡した場合、不完全履行だとしてAさんはBさんに「完全な履行の請求と合わせて損害賠償請求」をすることができます。
このとき、もしAさんとBさんが売買契約時に損害賠償額の予定を3000万円としていた場合、実際に建物を完成させるまでにかかった費用が1000万円だったとしても、Bさんは「3000万円」を支払わなければなりません。
ちなみに上記例では「契約時に」損害賠償額の予定を設定していますが、損害賠償額の予定は契約時でなくても設定できます。
■民法第415条 債務不履行
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。■判例、最判昭和34・9・17
金銭債務以外の債務について、債務者が義務を逃れるためには、履行不能が自己の責めに帰すべからざることを主張・立証することを要する。■判例、最判昭和35・4・21
不動産の二重売買において、一方の買主に対する売主の義務は、特段の事情のない限り、他の買主に対する所有権移転登記が完了した時に、履行不能となる。
【宅建試験での出題例】
問:裁判所は、賠償額の予定の合意が、暴利行為として公序良俗違反となる場合でも、賠償額の減額をする事は出来ない。
答えは×です。
公序良俗違反は無効ですので、実際の損害額に応じて賠償額の減額が可能です。
3つの債務不履行と、損害賠償額の予定に関してはかなり出題率が高いので、しっかり覚えておきましょう。
また、債務者が善意無過失で責任がない(例:放火で目的物が焼失した)場合は、債務不履行は認められない点も頭に入れておきましょう。
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