【無権代理とは】
代理権が無い者が代理人になりすまして代理行為を行う事を「無権代理」と言います。
実際には権利がないのですから、無権代理行為は原則、効力を生じません。
ただし、本人が追認した場合には、契約の時点にさかのぼって有効となります。
【追認とは】
例えば、土地の所有者であるAさんの息子であり、代理権を持たないBさんが、Aさんの知らないところで勝手にAさんの土地を売る契約をしてしまったとします。
Bさんにはそもそも代理権が無いので、Aさんは取引先の相手に対し契約の無効を主張できます。
けれど、実はAさん本人もかねてよりその土地を売りたかったとしたらどうなるのでしょうか。
その場合は、息子が勝手に売ってしまったのだとしても、結果的には自分で売る手間が省けてラッキーですよね。
「これを無効にしてしまうのはもったいない!」とAさんが判断し、Bさんの無権代理の行為を後から認めることを「追認」といいます。
後追いで認める、と覚えましょう。
本人(Aさん)が追認した場合、この契約は「契約の時点にさかのぼって有効」となります。
また、追認は契約の相手方にするのが原則ですが、無権代理人Bさんに追認した場合でも、相手方が追認の事実を知れば有効となります。
それでは、上の事例とは逆に、Aさんが「絶対に売らないぞ!」となったときはどうなるでしょうか。
追認を拒絶した場合は、その契約は無効となります。
【相手方の保護】
では、無権代理人であるBさんと契約をした相手方、Cさんの保護についてはどうでしょうか。
無権代理を理由に契約が無効になってしまうと、Cさんは不利益を被る可能性がありますね。
そのためCさんは、AさんとBさんに対して2つの対応を取ることができます。
1:催告
Cさんは、Aさんに対し、相当な期限をつけて、追認するか拒絶するか確答するよう催告できます。
期限内に確答がない場合は追認拒絶とし、契約は無効になります。
また、CさんがBさんの無権代理を知っていた(悪意)場合にも催告をすることができます。
2:取り消し
Cさんは、Aさんが追認する前であれば契約を取り消す事ができます。
ただし取り消しができるのはCさんが善意の場合のみに限ります。
3:責任の追求
Bさんが代理権を証明できず、Aさんの追認も得られない場合、CさんはBさんに対して契約の履行または損害賠償を請求できます。
ただし、これはCさんが善意無過失の場合のみに限られます。
4:表見代理人が成立する場合(Aさんにも責任がある場合)
Cさんは、Aさんに契約の履行を求めてもいいし、Bさんに対し責任の追求も可能です。
■民法第113条
1、代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2、追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りではない。■判例、最判昭和47・12・22
1、無権代理行為の追認は、相手方または無権代理人のいずれに対してもなすことができる。
2、無権代理人に対して追認した場合、相手方がその事実を知らなければこれを相手方に対抗しえないが、相手方から追認の事実を主張することは妨げない。
【宅建試験問題の例題】
問:AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。
しかし、Aは甲土地を売買する代理権は有していなかった。
Bが本件売買契約を追認しない間は、CがAの無権代理行為について悪意の場合であっても契約を取り消す事が出来る。
答えは×です。
追認までの間に取り消せるのは、Cが善意無過失の場合のみです。
無権代理において最も重要なポイントが追認です。
追認は「契約の時点にさかのぼって有効となる」事と、追認されなければ「効力を生じない」という事をしっかり覚えておきましょう。
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