【錯誤とはどんなもの?】
まずは錯誤の概要です。
錯誤とはいったいどういう状況を指すのでしょう。
簡単に言えば、勘違いや思い違いです。
誰だって勘違いをしてしまうことはあるでしょう。
わたしは昔、単3電池と思って買ったものが実は単4電池で、家に帰るまで気がつかなかったことがあります。
これも1種の錯誤と言えますね。
宅建試験における錯誤は下記のようなものです。
・錯誤は認められれば「善意の第3者にも対抗できます」
・錯誤は表意者に重大な過失がなければ認められます。
(それを見落とすなんてありえない! と思われなければセーフです)
錯誤には「要素の錯誤」と「動機の錯誤」というものがあります。
【要素の錯誤】
要素の錯誤は表意者に重大な過失がなければ認められると考えられています。重大な過失とは取引間のバランスを考慮したものです。
もし取引が無効になったときは、すべてが“無かった”ことになってしまうため、双方にとって重要かつ影響の大きい事柄になります。
そのときにいくら錯誤(勘違い)だったとはいえ、表意者に重大な過失(落ち度)があった場合にまで法的に保護をしてしまうと、相手方にとっては不平等となってしまいます。
そのため、民法では表意者に重大な過失があったときにまで保護する必要は無い、という考え方が採用されています。
【動機の錯誤】
動機の錯誤は、不動産業者との取引を思い浮かべてみましょう。
例えば、あなたが土地を探していたとします。
そのときに不動産売買の営業マンが、
「来年この一帯に、大きな分譲マンションが建つんですよ」
と言ってきたらどうでしょうか。
あなたはこう考えます。
(うーん……それならこの辺の土地が値上がりするかもしれないな)
「ここの土地、買いませんか?」
「買います!」
こんな感じです。
来年になり、結果的に分譲マンションの話は噂に過ぎず、土地の値段は上がりませんでした。
そのときあなたが「土地は値上がりしなかったじゃないか! 嘘つきめ、売買契約は無効だ!」と主張したとします。
けれど残念ながら無効にはなりません。
この場合は「動機の錯誤」にあたり、原則「無効にはならない」と解釈されています。
なぜなら、営業マンは「マンションが建つ」とは言いましたが、「土地が値上がりする」とは言っていません。
あなたが土地の購入を決めた理由が、「土地の値が上がるかもしれないと考えたから」、ということは営業マンも売主も知りません。
あなたが購入を決意するに至った動機を相手方に意思表示していないので、錯誤とは認められないのです。
■民法95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。
ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。■判例、最判昭和29・11・26
意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容としてこれを相手方に表示した場合でなければ、法律行為の要素とはならない。
また、錯誤を主張できるのは「表意者」か、「表意者に対する債権保全を行う必要のある債権者」のみです。
【錯誤を勉強するときのポイント】
• 錯誤には2種類あること。
• 善意の第三者に錯誤は対抗できること。
この2つが宅建の勉強で錯誤を覚えるときのポイントです。
さらに錯誤で押さえておきたいところは、「動機の錯誤に注意をすること」です。
表意者に重大な過失があると錯誤無効は主張できない、ということはすぐに頭に入ると思います。
しかし動機の錯誤は一見すると、表意者に同情できる部分があったりして民法で救ってあげたい気持ちになってしまうことがあります。
また動機の錯誤は例外的に、「表意者が取引の相手方に、契約をするに至った動機を示した時」は無効となる「可能性」があります。
上記の過去の判例でも出ていますね。
しかし、実際の本試験で「動機の錯誤の法則に照らし合わせてこれは無効か」 などとハッキリとした文章で問われることはあまりないでしょう。
「錯誤はただの勘違いだったよなぁ」くらいのふんわりした認識のままだと正誤の選択でうっかりミスをすることにつながります。
過去問をやるときに「この場合の錯誤は要素かな? 動機かな?」と注意しながら文章を読むクセをつけておくとイージーミスが減り問題を解くスピードも上がります。
過去問や本試験では、きちんと錯誤について理解しているか? ポイントを理解できているか? ということが問われます。
過去問をしっかりとこなしていれば確実な得点源になるでしょう。
錯誤の問題は深く考えて解く問題よりも、このケースの場合は、これだからこう、という問題が多いので問題文に提示された条件を用紙の隅に書き出しておくといいかもしれません。
正しいのはどれか? 誤っているのはどれか? と問われたときに書き出した条件に合致しているかどうかを確かめていけばまず間違いないでしょう。
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宅建試験の内容は浅く広くのスタンスなので、出題範囲が広い傾向にあります。
けれど、宅建業法や権利関係などは例年、基本的な分野が多く出題されるため、しっかりと要点をしぼっておけば得点しやすい試験でもあります。
とくに出題数が一番多い宅建業法などは、暗記問題のようなものが多く出てきます。
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