宅建試験対策! 権利関係
【不法行為・使用者責任について】
宅建試験に限らず日常生活でも、他人の不法行為によって不利益を被ることがあります。
そのときに「どんな責任があるのか」、などについてまとめました。
Aさんが、Bさんから借りている家に、全くの他人であるCさんが不法に占拠していたとしましょう。
自分が借りた家を他人に占拠されたAさんは、さまざまな不利益を被ってしまい困り果てています。
このように他人の不法行為によって被害を負った権利者を守るため、損害を賠償させることができます。
【不法行為による損害賠償時期】
不法行為による損害賠償請求権は、一定の期間内で行使をしないと時効で消滅してしまいます。
1:消滅時効期間
被害者またはその代理人が「損害および加害者を知ったときから3年」もしくは「不法行為発生時から20年で消滅時効が成立します。
2:履行遅滞
不法行為が発生したその時から履行遅滞に陥ります。
【使用者責任】
A社に雇われているBさんが、事業の執行について第三者に損害を与えてしまった場合、A社が損害賠償する責任を負います。
これを「使用者責任」と言います。
つまり、従業員(従業者)がやらかしてしまったミスの責任は、雇い主(使用者)である会社が負いますよ、ということです。
よくある事例としては、従業員が外回りの営業中に会社の自動車で人身事故を起こしてしまった場合です。
被害者は、A社またはBさんの両方に損害賠償を全額請求する事ができます。
それによってA社が賠償金を支払った場合は、相当だと認められる額をBに求償することが可能です。
【工作物責任】
Aさんは、Bさんから借りている家の屋根の修理工事をC社に依頼しました。
• Aさん⇒Bさんから借りている家の屋根の修理をC社に依頼
• Bさん⇒建物の所有者。Aさんに貸している
• C社⇒賃借人Aさんから依頼を受けて屋根の修理をする
万が一、工事中に部品が落下して、通行人に怪我をさせた場合には、C社ではなくAさん(当該建物の占有者)が損害賠償責任を負います。
Aさんが依頼しなければC社が工事によって部品を落とすことも無かったため、おおもとの責任は依頼したAさんが取るべき、と考えるとわかりやすいでしょう。
もしC社が工事の際に、部品等の落下防止措置をしていた場合には、AさんではなくBさん(所有者)が損害賠償責任を負います。
この件にBさんは関係ないように見えますが、占有者であるAが修理工事を依頼し、依頼を受けたC社は適切な措置を取った上で工事しています。
つまり、Aも適切な依頼をしていると取ることが出来ます。
• 占有者が必要な注意をしていなければ、占有者が責任を負う
• 占有者が必要な注意をしていれば、占有者は責任を免れる
その上で起こってしまった事故の責任を取るのは、たとえ無過失であっても当該建物の持ち主であるBさん(所有者の無過失責任)となります。
• 被害者保護の観点から、占有者が必要な注意をしていたときは、所有者が責任を負わなければならない。
• このとき、所有者の過失があるかどうかは関係ない。
【共同不法行為】
Aさんの所有する建物を数人が不法占拠し、Aさんに損害を与えた場合、この数人は連帯してAさんに対し損害賠償責任を負います。
もしAさんが数人(B、C、Dの3人としましょう)から総額で2000万円相当の損害を受けた場合、Aさんは全員に対して2000万円全額を請求することができます。
またBが2000万円全額をAに支払った場合、Bは、CとDに対して負担分を求償する事ができます。
■民法第709条 不法行為
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
【宅建試験での出題例】
問:不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者が催告をするまでもなく、その損害の発生のときから遅滞に陥る。
答えは○です。
不法行為・使用者責任においては、「誰が責任を取るのか」がポイントになります。
試験での出題傾向もやや高めですので、しっかり押さえておきましょう。
使用者責任の場合、損害を与えた本人ではなく、その雇い主(使用者)が責任を取る点は簡単ですので必ず覚えてください。
工作物責任は少しややこしいかもしれませんが、落ち着いて読み解ければ決して難しくはありません。
本当にあった、ジャズの生演奏喫茶などでの著作権に関する事件
ナイトパブ事件 ~著作権の侵害による不法行為~飲食店経営者等が、音楽著作物を上映しまたは演奏して公衆に見せまたは聞かせるためカラオケ等の装置を使って利益をあげることを意図しているときは、当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り、演奏権ないし上映権侵害による不法行為責任を免れない。
(裁判所判例 | 最判昭和63・3・15)これらの経営者等にカラオケ装置をリースするリース業者は、相手方に対し、当該著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく、相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し、または申込みをしたことを確認した上で装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。
(裁判所判例 | 最判平成13・3・2)
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