宅建試験対策! 権利関係
【法定地上権とは】
AさんはB銀行からお金を借り、所有する土地およびその上の建物に抵当権を設定しました。
けれどAさんは借金を返済することができず、B銀行が抵当権を実行して競売にかけました。
それにより、Cさんが建物を、D不動産が土地を競落したため、「土地と建物の所有者が違う」ということになってしまいました。
• Aさんの建物と土地⇒競売されて他人の物になった
• 建物⇒Cさんが所有者に
• 土地⇒D不動産が所有者に
この場合、CさんはD不動産に対し、土地の明け渡しを請求できるのでしょうか?
Cさんは「法定地上権付きの建物を取得するだけ」で、D不動産に土地の明け渡しを請求することは出来ません。
そもそも土地と建物は別々の不動産ですので、抵当権も土地と建物それぞれ別に設定することが可能です。
もしAさんの戸建住宅が建っている「土地のみ」に抵当権が設定されていた場合、競落によって土地がD不動産の物になっても、建物の所有者はAさんです。
• Aさんの土地だけが競売に出された場合
• 建物⇒Aさんが所有者のまま
• 土地⇒D不動産が所有者に
そして建物には抵当権が設定されていませんから、Aさんの建物の所有権も守られるべきと考えられます。
仮にD不動産が、Aさんに対して「建物を壊して出て行け」と主張出来るとしたら、それはAさんの権利を無視したあまりにも理不尽な話になってしまいますね。
【法定地上権】
上記の例のような場合、建物の所有者であるAさんに「その建物が建っている土地の利用権(地上権)を認めてあげますよ」という権利を「法定地上権」と言います。
D不動産は土地の所有者ではあっても、自分で利用することは出来ません。
その代わりに、適正な地代をもらう権利を有します。
【法定地上権が成立する3つの条件】
1:抵当権設定当時、土地の上に建物が存在した。
2:抵当権設定当時、同一人が土地と建物の両方を所有していた。
3:抵当権の実行により、土地と建物の所有者が別々になった。
以上3つの条件は重要ポイントですので知識の定着をしておきましょう。
<サイト管理者コラム ~地上権について~>
これまでにマンションの物件情報で、「地代〇〇万円」と記載されている部分をご覧になったことはないでしょうか?
これは他人の土地の上にマンションが建っていて、地上権が設定されているときに発生するものです。デベロッパー(開発業者)がマンションを建てるときに、その一帯の土地を買い取って建てる場合と、他人の土地を借り上げて建てる場合があります。
土地を借りた場合は地上権を設定して地代を払うことになります。地上権付きの分譲マンションを購入した場合、管理費や修繕積立金とは別に、毎月の地代を支払う必要が出てきます。
また同じように、賃貸マンションを借りるときも地代が家賃に含まれていたり家賃とは別に地代を請求されることもあるので、入居前に不動産屋に確認しておくといいでしょう。
ちなみに地代が家賃などに含まれている場合は、物件情報に記載していないこともあります。賃貸マンションの場合は借地であってもそこまで大きな影響はありませんが、分譲マンションを購入する際は、「借地で地上権が付いているか」などは確認しておいたほうが安心ですね。なぜなら、その地上権に期限付きの場合があるからです。
【一括競売について】
更地に抵当権が設定され、その後に建物が建てられたとします。
この場合、法定地上権が成立する3つの条件の1を満たしていませんので、法定地上権は成立しません。
もし土地だけが競売にかけられた場合は、建物所有者は土地を利用する権利がありませんので、新たに土地の所有者となった者から「建物を壊して出て行ってね」といわれても対抗出来ないという事態に陥ってしまい、抵当権の強みが活かされません。
そこで、「抵当権設定”後”」に抵当地に建物が建てられた場合には、「土地と建物を一括して競売できる」としています。
これを「一括競売」といいます。
ただし優先的に弁済を受けられるのは土地の代金からだけです。
■民法第388条 法定地上権
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合おいて、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。■判例、最判昭和36・2・10 抵当権設定時に建物が存すること
法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであって、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がない。
【宅建試験での出題例】
問:Aが、BのためにA所有の更地に抵当権を設定した後、Aが当該更地に建物を新築した。
この場合、抵当権者Bは、土地については競売することができるが、建物については競売できない。
答えは×です。
抵当権設定後に建物が建てられた場合は、「土地と建物を一括競売出来る」と覚えておきましょう。
抵当権の中でも「法定地上権」と「一括競売」に関する出題率は高い傾向にあります。
法定地上権が成立する3つの条件と、抵当権設定後に建物が建てられた場合は土地と建物を一括競売できる、という部分は重要ですのでしっかり覚えておきましょう。
最近のコメント