宅建試験対策! 権利関係
【担保責任】
せっかく大金を払って購入した住宅の建物がもし壊れていたら、あなたは納得できるでしょうか?
購入者側からすれば納得できるはずがありませんね。
そして、壊れている建物を売った売主は、当然相応の責任を負わなければなりません。
これを売主の「担保責任」と言います。
もし売主に過失がなかったとしても、担保責任を負わなくてはならない(無過失責任)のです。
売買契約の際、「売主は担保責任を負わない」という特約を組む事も可能ですが、その特約があったとしても、売主があらかじめ売買の目的物に瑕疵があるとわかっていて、それを買主に黙っていた場合には無効となります。
当然担保責任を負わなければなりません。
実際の不動産売買の現場では、たいていこの特約が付けられています。
もくじ
<宅建勉強でよく使う担保責任の早見表>

【6つの担保責任】
1:売った土地や建物の全てが他人の物だった場合(全部他人物売買)
Aさんから買ったと思っていた土地の全てが、実はCさんの物だった場合、Aさんは他人であるCさんの土地をBさんに売ったことになります。
Aさん⇒Bさんに土地を売った (実はCさんの土地!)
このとき、AさんがCさんから土地を購入し、ちゃんとBさんに引き渡すことができれば問題なく契約は成立しますが、もしCさんがAさんにこの土地を売ってくれなかったとしたら、当然Bさんが困ることになります。
Cさん「土地は売らないよ!」⇒Aさん「やばい……」
Bさん「Aさん、早く土地を引き渡してよ!」⇒Aさん「だってCさんが売ってくれないんだもん!」
このような場合、当然Aさん(売主)には担保責任が生じます。
そしてBさん(買主)は、善意でも悪意でも「契約を解除できる」権利を有します。
さらに善意であれば「損害賠償請求」も可能ですが、悪意であれば損害賠償請求はできません。
2:売った土地や建物の一部が他人の物だった場合(一部他人物売買)
Bさんが、Aさんから買った土地の一部がCさんの物だった場合、例え一部であっても他人の物を売ったことに変わりはありません。全部他人物売買と同様に、Bさんに契約した土地を引き渡せなければAさんに担保責任が生じます。
Bさんが善意であれば、契約解除、損害賠償請求、代金減額請求ができる権利を有します。
悪意であれば、代金減額請求ができる権利のみとなり、さらに契約してから一年間以内でなければ、この代金減額請求はできません。
■民法第560条 他人の権利の売買における売主の義務
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。■民法第561条 他人の権利の売買における売主の担保責任
前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。
この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。■判例、大判昭和17・10・2 履行不能
他人の権利の売買において、売主がその権利を取得して買主に移転しうる状態にあったのに、買主自ら直接に権利者から譲り受け、そのために売主が履行不能となったときは、買主は本条の解除権を有しない。
3:数量不足・一部滅失
例えば4棟の建物を売買する契約をしたにも関わらず、実際には3棟しか建物が無かった場合。
買主が善意であれば、代金の減額請求、契約の解除、損害賠償請求ができる権利を有します。
逆に悪意であれば、わかった上で契約したのですから、何の請求も出来ません。
4:用益的権利による制限
売主の売った物に地上権や地役権といった使用収益することを制限する権利が設定されていて、これらのせいで契約の目的が達成できない場合。
買主が善意であれば、それを知った時から1年以内であれば契約の解除、損害賠償請求ができる権利を有します。
悪意であれば、何の請求も出来ません。
■民法第566条 地上権がある場合等における売主の担保責任
1、売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。
この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2、前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3、前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
5:担保的権利による制限
売主の売った物が、抵当権等の権利実行によって所有権を失ってしまう場合には、善意でも悪意でも関係なく契約解除と損害賠償請求ができる権利を有します。
■民法第567条 抵当権等がある場合における売主の担保責任
1、売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2、買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
3、前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。
6:瑕疵担保責任
売主の売った物に、隠れた傷や破損(瑕疵)があった場合。
買主が善意かつ無過失の場合、瑕疵の存在を知った時から1年以内であれば契約の解除、または損害賠償請求ができる権利を有します。
売主の売った物が新築住宅であれば、「住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵」があった場合に特例として、買主に建物を引き渡してから10年間(特約で20年まで引き伸ばし可能)以内であれば、解除、損害賠償に加え、「瑕疵補修」を要求することができますが、買主に不利な特約は無効となります。
■民法第570条 売主の瑕疵担保責任
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りではない。■判例、大判大正15・5・24 「瑕疵」の意義
見本品を定めて行った特定物売買において、給付した目的物が見本品と異なるときは、売主は瑕疵担保の責めに任じなければならない。■判例、最判昭和41・4・14 都市計画街路
買主が居宅の敷地として使用する目的を表示して買い受けた土地の約八割の部分が都市計画街路の境域内に存するため、たとえ買主が右居宅を建築しても早晩、全部または一部を撤去しなければならない場合において、右計画街路の公示が売買契約成立の十数年以前に告示の形式でなされたものであるため、買主において右事情を知らなかったことについて過失があるといえないときは、売買の目的物に隠れたる瑕疵があると解するのが正当である。
【宅建試験での出題例】
問:宅地建物取引業者である売主Aが、自ら所有している土地を宅地建物取引業者でないBに売却した場合、売買契約でAが一切の瑕疵担保責任を負わない旨を合意したとしても、Aは甲土地の引渡しの日から2年間は、瑕疵担保責任を負わなければならない。
答えは×です。
売主が宅建業者で、買主が宅建業者でない場合、瑕疵担保責任を一切負わないという特約は買主にとって不利になるため無効です。
特約が無効となることにより民法の規定がそのまま適用されるため、瑕疵担保の期間は「発見した時から1年以内」となり、引き渡しの日から2年ではありません。
実際の試験では、上記例題のような引っ掛けが多く出てきます。
特に6つの担保責任の中でも「瑕疵担保責任」は必ずと言っていいほど出題されますので、しっかりと理解しておくことをオススメします。
また、それぞれの責任追求期間が「知った時」から1年なのか、「契約した時」から1年なのか、といった違いがありますので注意しましょう。
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